「わが町」あらすじと解説・登場人物や舞台 ソーントン・ワイルダー



ヒトコトあらすじ


 架空の町を舞台にさまざまな家庭を長年追っていく形式となっており、最後に死んでいった登場人物らが、人間は生きていることの素晴らしさに気付かされ人生の儚さを悟る、という物語となっています。


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●1.基本データ
 Lキャラクター構成
    L舞台設定
 L詳しいプロット(展開)
 L文章抜粋
 

●2.補足データ
   Lココがスゴい!
 L似ている名作
 L似ている最近の作品 
 Lメディア化


●3.作者について
  L同じ年代の有名作品
        L同じ国の有名作家



1.基本データ





初刊:1938年 :ソーントン・ワイルダー
長さ:短編 ジャンル:家庭群像劇




キャラクター構成



ギブス医師・・・・グローヴァーズ・コーナーズの医者。

ギブス夫人・・・・ギブス医師の妻。

ジョージ・・・・ギブス家の息子。エミリーに想いを寄せている。

リベッカ・・・・ギブス家の娘。

ウェブ氏・・・・ウェブ家の父親。記者。

ウェブ夫人・・・・ウェブ氏の妻。

ウォリー・・・・ウェブ家の息子。劇内にあまり登場することなく、早く亡くなる。

エミリー・・・・ウェブ家の娘。頭が良い。ジョージに想いを寄せる。

サイモン・スチムソン
・・・・風変わりなオルガニスト。



舞台



グローヴァーズ・コーナーズ・・・ニューハンプシャー州に存在する架空の町。登場人物らが住んでいる町。



詳しいプロット(展開)



●グローヴァーズ・コーナーズの人々

 舞台に進行役が登場。グローヴァーズ・コーナーズという町について詳しく説明するところから劇は始まる。
 そして物語は1901年の早朝。仕事を終えたギブス医師が自宅へと戻ってくる。途中で新聞配達の少年や牛乳配達人などに出会い、それぞれと挨拶を交わす。ギブス医師が帰宅するのとほぼ同時期、ギブス夫人はジョージとリベッカを起こそうとしている。やがて朝の食卓を終えると向かいに住んでいるウェブ家の子供、ウォリーとエミリーと共に子どもたちは学校へと向かった。ギブス医師が朝食後に仮眠を取りに行くと、ギブス夫人は、鶏の餌やりへと向かい、ちょうど庭にいたウェブ夫人と話をはじめ、古いタンスを売ろうか売らまいかなどといった他愛のない世間話を繰り広げたりする。


●町の紹介

 やがて再び進行役が登場。進行役に呼ばれて登場したウィラード教授が、グローヴァーズ・コーナーズの歴史や人口などといったさまざまな説明がなされる。

 

●ジョージとエミリー


 物語へと戻り、子どもたちが下校してくる時間帯。ジョージはひとり帰っていたエミリーに話しかけ、彼女の学校での発表や、いつも夜遅くまで勉強していることなどを称賛する。そして話しついでにジョージは宿題をぜひ手伝ってほしいと頼み込むと、褒められて得意げになったエミリーは快く応じるのだった。さらにジョージは自分は学校を卒業したら農業を継ぐということをエミリーに打ち明け、町に残る意思を示す。
 その後、帰宅したエミリーは母親のもとへ行き、自分は魅力的かと訪ねるが、母は面倒くさそうな様子であまり応じてはくれなかった。

 

●月夜の営み


 やがて夜になり、ギブス・ウェブ両夫人が聖歌隊の練習へ向かう。いっぽうのジョージとエミリーは向かい合った窓から顔を出して、宿題について話し合ったりしながら、お互いの気持ちを探り合う。
 やがて帰ってくる夫人たちは、聖歌隊の指揮者であるサイモン・スチムソンについて噂話をする。彼は年中酔っ払っていて、生活になじめていない人物であるため、夫人たちの間でもあまり良い印象を持たれていなかった。やがて仕事を終えたウェブ氏が帰宅。うっとり月を眺めているエミリーに挨拶をする。いっぽうのジョージもリベッカと月を見ながら話をしているのだった。そして第一幕が終了する。



●結婚の準備


 3年の月日が流れた1904年。ジョージとエミリーの結婚式の朝に時軸は設定される。ギブス家では、若い夫婦のこれから心配をしながらも、自分たちの若い頃に想いを馳せる。そこにジョージが登場。落ち着きのない様子のジョージはすぐに向かいのウェブ家へと顔を出しに行く。ジョージは義父となるウェブ氏に夫婦円満の秘訣を求めるが、ウェブ氏は冗談交じりにおどしたあとで、人にアドバイスを求めてはいけない、と優しく新郎に説くのだった。

 町では、新郎と新婦は結婚式まで会うことができないというしきたりがあったため、やがて準備を終えたエミリーが二階から降りてくるということで、ジョージはウェブ家から追い出されるのだった。

●結婚の経緯


 時間は遡り、ジョージとエミリーが高校二年の時間軸に。下校している二人。ジョージが自分がクラス委員に選ばれたこと、エミリーが初期会計係に選ばれたことなどを話題にするが、エミリーはどこかそっけない。ジョージがなぜ不機嫌なのかと訪ねると、エミリーはジョージが最近変わってしまったことが気に入らないのだと打ち明ける。ジョージは野球に熱中しすぎており、家族との時間も大切にせずうぬぼれてしまっているとエミリーは指摘する。するとジョージはその忠告に礼を言い、その流れでドラックストアでソーダを飲もうと彼女を誘った。そしてソーダを飲みながら、ふたりはようやくお互いが好きであったということに気づく。そしてジョージはエミリーとずっと一緒にいるためにその場で大学進学ではなく、町に残るという決断をするのだった。
 場面はふたたび結婚式へ。式は進行していき、若いふたりを町の人々が祝福するシーンで場面は終了する。

 

●エミリーの死


 9年の月日が流れ、ときは1913年。進行係が登場して、舞台が町の丘の上にある墓地であることが提示され、9年のあいだに多くの人々が亡くなったことが説明される。そのなかにはギブス夫人、ウォリー(エミリー弟)、サイモン・スチムソンなどの名前もならんでいる。そしてそこにあらたな「エミリー」の墓もあった。エミリーは2人目のお産の際に死んでしまったのだった。
 場面では雨で降っており、葬儀の参列者たちは新しい墓へとむかって列をなして進んでいる。
 やがてエミリーと死んだ人々の霊たちが現れ、彼らは話を始める。エミリーはギブス夫人が遺した350ドルの遺産がすごく役になったことなどを話しながら、葬儀の様子を見る。
 葬儀が終わると、エミリーはもう一度現世に戻ることが出来るように感じた。しかし死者たちは生前の日々をもう一度体験するのは辛いことだと反対するが、エミリーも引かない。すると死者たちに最も意味のない火を選べと条件をだされたため、エミリーは12歳の誕生日を選択した。


●ありふれた幸せ


 1989年に戻されたエミリー。幼い自分や若い家族たちの姿に序盤は興奮するエミリー。しかし段々とあることに気付かされていく。
 意味のない日であったにも関わらず、そこに映る自分や家族たちはそこに存在している”ありふれた幸せ”にあまりにも無自覚な様子だったからだ。家族全員で過ごせる時間はほんのわずかだったにも関わらず、だれもそれに気づかず、淡々と日々を過ごしている。耐えられなくなったエミリーは結局墓場へと戻ってくる。

 

●人生の意味


 そしてエミリーは悲嘆にくれているジョージを見る。そして彼や生きている人々を哀れに思う。なぜなら人間は生きているあいだ、人生の持つすばらしさに気づくことができないと思うからだった。

 





文章抜粋


●幕なし。装置なし。入場する観客には、薄明かりの空虚な舞台が目にはいる。間もなく舞台監督が、防止をかぶりパイプをくわえて現れ、テーブル一個と椅子三脚とを左手舞台全面に、同じくテーブル一個と椅子三脚とを右手舞台前面に並びはじめる。(冒頭の一文)


●エミリー「さよなら、世のなかよ、さようなら。グローヴァーズ・コーナーズもさようなら……ママもパパも、さようなら。時計の音も……ママのヒマワリも。それからお料理もコーヒーも。アイロンのかけたてのドレスも。あったかいお風呂も……夜眠って朝起きることも。ああ、この地上の世界って、あんまりすばらしすぎて、だれからも理解してもらえないのね。

● 懐中時計のネジを巻く。
ふん…わが町はもう十一時ーーでは、みなさんもぐっすりご休息を。おやすみなさい。(最後の一文)



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2.雑多データ


ココがスゴい!


執筆中…


似ている名作




捜索中…



似ている最近の作品


●CLANNAD-クラナド-

ゲームブランド『key』の代表作。若い妻が難産で亡くなってしまう展開、冒頭のセリフ「この町は嫌いだ」というように”ある町”がテーマとなっている部分などといった部分はかなり似ているかと思います。




メディア化


●我等の町(1940年映画)
1940年・1947年などに映画化がされています。DVDが販売されており、Amazonプライムなどではストリーミングで視聴が可能です。原作と結末が異なり、エミリーが復活するというハッピーエンドとなっています。




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3.作者データ

 ソーントン・ワイルダー

 アメリカの劇作家。アメリカ演劇における代表的な劇作家として名の挙がる人物。二度ピューリッツアー賞を獲得している。


  • 長い長いクリスマスディナー(The Long Christmas Dinner, 1931年)
  • ヨンカーズの商人(The Merchant of Yonkers, 1938年)
  • 危機一髪(The Skin of Our Teeth, 1942年)
  • 結婚仲介人(The Matchmaker, 1954年)
  • テオフィリス・ノース(Theophilus North, 1973年) – 日本語訳は『ミスター・ノース』

主な日本語訳

  • 『サン・ルイス・レイ橋』 松村達雄訳、岩波文庫、1951年、復刊1987年
  • わが町 鳴海四郎訳、早川書房・ハヤカワ演劇文庫(新版)、2007年
  • 『第八の日に』 宇野利泰訳、早川書房、1977年
  • 『ミスター・ノース』 村松潔訳、文藝春秋、1989年
  • 『ソーントン・ワイルダー戯曲集』 新樹社(全3巻)、1995年
  • 1 わが町(鳴海四郎訳)、2 危機一髪(水谷八也訳)、3 結婚仲介人(水谷八也訳)
  • 『三月十五日 カエサルの最期』 志内一興訳、みすず書房、2018年



同じ年代の有名作品
  • 「征服されざる人々」ウィリアム・フォークナー(アメリカ1938)
  • 「嘔吐」ジャン=ポール・サルトル(フランス1938)
  • 海の男-ホーンブロワー・シリーズ-」セシル・スコット・フォレスター(イギリス1937-1939)

同じ国の有名作家
  • ウィリアム・フォークナー(アメリカ)
  • クリフォード・オデッツ(アメリカ)
  • ジョン・スタインベック(アメリカ)


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Author: meisaku

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