ヒトコトあらすじ
けちでお金持ちと評判の主人公(ロイド嬢)が、かつての恋人の娘に出逢ったことをきっかけに、徐々に町のひとびとに心を開いてゆき、最後には幸せになるという物語です。
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●1.基本データ
Lキャラクター構成
L舞台設定
L詳しいプロット(展開)
L文章抜粋
L作者について
L同じ作者の作品
L同じ年代の有名作品
L同じ国の有名作家
●2.社会データ
L歴史的背景
L社会に与えた影響
Lメディア化
●3.類推データ
Lココがスゴい!
L似ている名作
L似ている最近の作品
1.基本データ
初刊:1912年 作者:ルーシー・モード・モンゴメリー
長さ:短編 ジャンル:ヒューマン
※『アンの友だち(短編集)』の収録作品のひとつです
キャラクター構成
ロイド老嬢(マーガレット・ロイド)・・・主人公。”背曲がり”ジャック・スペンサーという男を薪割りなどの雑用として雇っている。マーガレットは若かりし頃の名前。
シルビア・グレー・・・レスリー・グレーの娘。音楽学校に通うお金のために、教師をしている。
レスリー・グレー・・・シルビアの父。マーガレット・ロイドの元婚約者。
“背曲がり”ジャック・スペンサー・・・ロイド老嬢が見栄を張るために雇っている男。おしゃべり好きで町の情報などをロイド嬢に教える。
ウィリアム・スペンサー・・・シルビアが世話になっている宿主。
アンドリュー・キャメロン・・・ロイド老嬢が憎む相手。かつて自分の両親からお金を奪い取った相手として憎んでいる。
ジャネット・ムーア・・・シルビアの友人。
メアリー・ムーア、ジミー・キンバル、テディー・キンバル・・・スペンサーベイルの子どもたち
舞台
スペンサーベイル・・・物語が展開される町の名前。
シャーロットタウン・・・ロイド老嬢がぶどうの水差しを売るために出かけに行った町。仇であるアンドリュー・キャメロンにも遭遇する。
教会・・・ロイド老嬢が久々に訪れて驚かれる。シルビアが独唱する。
詳しいプロット(展開)
森の奥に住んでいるロイド老嬢は、ケチなお金持ちだと町のひとびとに言われていた。人嫌いで教会にも来ず、時々みかけた子供たちは怖がって逃げ出すなど、町人は忌み嫌っていた。
しかし実際のロイド老嬢はそうではなく、きわめて貧しい暮らしをしていた。しかしプライドが高かったため、貧乏がバレるのを恐れて外にも出ず、使用人をわざわざ雇ってお金を払い、自分の食事を減らすといった生活を余儀なくされていたのだ。
そんなある日、茂みの陰から子供たちを引き連れて歩く、新しい音楽教師を目撃する。どこかで見たことのある顔だと思ったロイド老嬢だったが、ジャック(使用人)から彼女の名前(シルビア・グレー)を聞き、自分のかつての婚約者レスリー・グレーの娘であるということを確信する。一歩間違っていたら自分の娘だったかもしれないーーそんな母情を抱いたロイド老嬢は、彼女を喜ばせる計画を模索しはじめるのでした。
その後ロイド老嬢は、シルビアの通り道に、野の花やイチゴといったものを宛名だけを書いた紙を添えて置いておくということを始める。シルビアは贈りものを大層よろこんだが、ほんとうの差出人は分かっておらず、クリス・スチュアートという知り合いが自分に贈ってきているのだと勘違いする。いっぽうのクリス・スチュワートは、差出人がロイド老嬢であることを知っていた。なぜなら10年前、森の中で傷を負って泣いているときに、ロイド老嬢が優しく手当てしてくれて、おこづかいまでくれたという思い出があったためである。
贈りものを捧げ、充実した日々をおくるロイド老嬢。そんなある日、卵商人から「教会でシルビアが献金のために独唱する」ということを聞く。なんとしてもシルビアの歌声を聴きたいロイド老嬢だったが時代遅れの服装で教会へ行くことは、高いプライドが許さなかったし、長いあいだ訪れていない教会に突然行くこともはばかられたからだ。それでもシルビアの歌声を聴きたいという一心から、ロイド老嬢は重い腰をあげるのだった。
ロイド老嬢が教会に来たことで、教会はざわめき立った。しかしロイド老嬢の心配をよそに、周囲からは威厳と尊敬のまなざしを向けられるのだった。やがてシルビアの輝かしい歌姿を目にして「ああ、教会にやってきて、本当によかった」とロイド老嬢は満足するのだった。
そのあとも贈り物を捧げる日々は続いていたが、ある日使用人のジャックから、シルビアがパーティーに誘われるが、良いドレスを買うお金を工面できなくて困っているという事情を聞く。シルビアは絶対にそのパーティーに行かなくてはならないーーーそう思ったロイド老嬢は大切にしていた”ブドウの水差し”を売って、シルビアにドレスを買う計画を立て、シャーロットタウンへ出かける。町(スペンサーベイル)ではロイド老嬢のめずらしい外出を見て、お金を黒い箱に入れて、銀行に持っていたのではないかという噂が流れていたが、ロイド老嬢は知る由も無い。
シャーロットタウンで、なんとかシルビアのドレスを手に入れたロイド老嬢だったが、その帰りでアンドリュー・キャメロンに遭遇する。キャメロンはかつて自分の両親をだまして金を騙し取り、自分が貧乏な暮らしを強いられることとなった元凶だった。キャメロンがロイドに気がつくも、ロイド老嬢はさっさとその場をあとにした。
その後、シルビアのドレス姿を木陰からのぞき、まぶたに焼き付いた美しさを思い返しながら、眠れない夜を過ごすのだった。
ある日、牧師のおくさんが大胆にもロイド老嬢のもとへ訪ねてくる。それは裁縫クラブへの誘いだった。ロイド老嬢は偉そうに断ろうとしたが、若い娘(シルビア)たちも来るということを聞き、その誘いを受けることにした。ロイド老嬢はみごとな手並みで縫い物をしながら、シルビアとジャネットのおしゃべりに耳を傾けているのだった。するとシルビアは自分の父(レスリー)がかつて詩人であったこと、その詩の記された本を一度でいいから見てみたいという話をしていた。それを聞いたロイド老嬢はかつてレスリーからもらった詩本を、シルビアの屋敷の差し入れ口へと入れて贈るのだった。
その後、裁縫クラブでシルビアと会話する機会を得たロイド老嬢。正体不明の贈り主のことを妖精の代母などと呼んでいること、すごく感謝しているなどという心情を聞くが、ロイド老嬢が自ら正体を明かすことはなかった。そしてある日、裁縫クラブで牧師のおくさんからグレーが音楽学校に行こうとしていることを聞き、同時に仇が資本となっている「キャメロン奨学金」のことも耳にする。口もききたくない相手だったが、シルビアのためキャメロンへ奨学金の交渉へ向かう。するとキャメロンのほうも過去の仕打ちを申し訳なく思っており、奨学金の件を了承したうえで、ロイド老嬢に今夜は泊まっていって欲しいと願う。しかしロイド老嬢は意地を張ってキャメロンのもとをあとにします。するとその帰り道に雨が降り出しました。びしょ濡れになりながらなんとか家に着いたロイド老嬢ですが、雨がたたって熱にうなされてしまうことになりました。
その後、テディー・キンバルという少年がシルビアのもとへ焦った様子でやってきます。テディーは牧師の奥さんのおつかいとして、裁縫クラブのことを知らせるためにロイド老嬢を訪ねたが、顔を真っ赤にした様子のおかしいロイド老嬢を見て、シルビアのもとへ助けを求めにきたのだった。テディーとともにロイド老嬢の家を訪ねるシルビア。そして、病に弱っていたロイド老嬢は、シルビアに対していままでの彼女にたいして行った真実を、つい熱にうなされながら全て吐露していまします。
やがて病を克服したロイド老嬢でしたが、やさしく美しい心を持つ本当の正体を町の人々に知られてしまいます。ですが町のなかに憐れな目で見る人物はひとりもいませんでした。
それからは町の人たちとも仲良くなり、ロイド老嬢は幸せに暮らすのでした。
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文章抜粋
●噂というものはいつも、三分の一は正しいが、あとの三分のニはまちがっているものだ。
●ある日、マーガレットは、自分の人生から愛を永遠に追いだしてしまったことに気がついた。二度と自分の手にとりもどすことができないのがわかった。その瞬間から、マーガレットは青春をあとにして、影の谷間にむかっておりていき、寂しい、風変わりな老婆になってしまったのだ。
●「申し分ないくらい幸せですよ」ロイド老嬢はうれしくてたまらないというように、深いため息をついた。(最後の一文)
作者について
ルーシー・モード・モンゴメリーカナダの女性作家。『赤毛のアン』シリーズは世界的ベストセラーとなっている。マーク・トウェイン(アメリカの作家)曰く、赤毛のアンは「不滅の生命を持ち、「不思議の国のアリス」と並ぶような存在」と称されている。幼いころからロマンチックな物語を描くのが好き。作風は少女の成長物語とハッピーエンドが多い。
同じ作者の作品
長編
- 『赤毛のアン』1908
- 『アンの青春』1909
- 『果樹園のセレナーデ』1910
- 『ストーリー・ガール』1911
- 『アンの友だち』1912※今作収録の短編集
- 『ストーリー・ガール2黄金の道』1913
- 『アンの愛情』1915
- 『アンの夢の家』1917
- 『虹の谷のアン』1919
- 『アンをめぐる人々』1920
- 『アンの娘リラ』1921
- 『可愛いエミリー』1923
- 『エミリーはのぼる』1927
- 『青い城』1926
- 『エミリーの求めるもの』1927
- 『マリーゴールドの魔法』1929
- 『もつれた蜘蛛の巣』1931
- 『銀の森のパット』1932
- 『パットの夢(パットお嬢さん)』1935
- 『丘の家のジェーン』1937
- 『炉辺荘のアン』1939
- 『アンの村の日々』1974
- 『アンの仲間たち』1988
- 『ルーシーの約束』1979
- 『渚の求婚』1989
- 『影の谷を越えて』1990
- 『時の扉の向こうには』1991
- 『アンのクリスマス』1995
- 『アンの想い出の日々』2009
- 『夜警ー詩集』1916
随筆
- 『モンゴメリ日記ープリンス・エドワード島の少女ー』1885-2004
- 『険しい道ーモンゴメリ自叙伝』1917
- 『モンゴメリ書簡集Ⅰ』1980
同じ年代の有名作品
- 「イーサン・フロム」イーサン・ウォートン(アメリカ1911)
- 「西欧人の眼に」ジョゼフ・コンラッド(イギリス1911)
- 「聖女ジョウン」ジェイムズ・スティーヴンス(アイルランド1912)
同じ国の有名作家
- アリス・マンロー(カナダ)
- ティモシー・フィンドリー(カナダ)
- ルイ・エモン(カナダ)
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2.社会データ
歴史的背景
1910年代のカナダは、第一次世界大戦の勃発により、イギリス・フランス側についたりしています。
社会に与えた影響
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メディア化
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3.類推データ
ココがスゴい!
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似ている名作
●「クリスマス・キャロル」チャールズ・ディケンズ
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日本でも有名なディケンズの有名作品「クリスマス・キャロル」。金持ちの老人スクルージが、改心して町の人々に施しをして、最後には幸せに包まれるという筋書きになっています。幽霊要素をのぞけば、変わり者の老人が主人公であること、最後は町の人々に愛されるなどといった点がかなり似ているかと思います。
似ている最近の作品
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