ヒトコトあらすじ
技術の進歩によって、生まれた時点から社会的運命を決定づけられる近未来世界(ディストピア)。そんな世界に疑問を抱いて立ち上がる人物らを描いていくが、最後にはほぼ全員が悲劇的な最後を迎える、という物語となっています。
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●1.基本データ
Lキャラクター構成
L舞台設定
L詳しいプロット(展開)
L文章抜粋
L作者について
L同じ作者の他作品
L同じ年代の有名作品
L同じ国の有名作家
●2.社会データ
L歴史的背景
L社会に与えた影響
Lメディア化
●3.類推データ
Lココがスゴい!
L似ている名作
L似ている最近の作品
1.基本データ
初刊:1932年 作者:オルダス・ハクスリー
長さ:長編 ジャンル:ディストピア
キャラクター構成
バーナード・マルクス・・・・アルファ・プラス階級。身長が低いことがコンプレックス。
レーニナ・クラウン・・・・アルファ階級。本作のヒロイン。
ジョン・・・・居留地で出会う青年。のちに所長の息子であることが発覚する。
ヘルムホルツ・ワトスン・・・バーナードの友人。バーナードと同じく現在の世界に疑問を持っている。
ムスタファ・モンド・・・世界の10人の総統のひとり。
所長・・・孵化・条件付けセンター・ロンドンの所長。
舞台
人工孵化・条件付けセンター・・・人間を生産する工場。世界中に工場があるが、物語では主にロンドンセンターでの出来事がえがかれる。
ミューメキシコ居留地・・・テクノロジーから隔絶された居留地。青年・ジョンと出会う場所となっている。
詳しいプロット(展開)
●人工孵化・条件付けセンターの見学
物語はロンドン・人工孵化センターの所長が見学生らを引率しながら、人間が生産される仕組みを紹介しているシーンから物語が始まる。
遺伝子レベルで出生がコントロールできるようになったという世界観が紹介され、酸素の供給量によって胎児の知能レベルをコントロール→生まれながらに階級(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、エプシロン)を設けることができるようになったこと、やらなければならないことを好むように社会的運命をインプットさせる技術など、世界をより安定に保つための人間生産の工程が紹介されていきます。
また、この見学シーンのなかでは、レーニナ、バーナード、ムスタファなど、ほとんどの主要人物が登場します。
●疑問を抱くレーニナ
人工孵化所で働いているアルファ階級女性・レーニナ・クラウンはもう四カ月ものあいだ、ヘンリー・フォスターという男と交際を続けていた。物語世界においては、ふたりの男女が長く付き合うことは前時代的な行いとされ忌避されていたが、レーニナ・クラウンはそんな慣習にどこか疑問を抱いていた。しかし同僚のファニーに心配されたため、レーニナは「バーナード・マルクス」を次の交際相手にしようと打ち明ける。しかしファニーはあまりいいリアクションをしなかった。なぜならバーナードはアルファ・プラス階級にもかかわらず規定より背や協調性も低く、変わった人物として有名だったからであった。
●バーナードという男
バーナード・マルクスはアルファ・プラスと高い階級であったが身長が低いなどといった要素をコンプレックスにしている繊細な人物であった。そしてその劣等感ゆえに、大衆が使っている快楽麻薬「ソーマ」を用いることを拒絶したりと、周囲に溶け込まないアウトサイダー的な一面を持っており、所長にもどこか毛嫌いされているような存在だった。
そんな彼にはヘルムホルツ・ワトスンという情報科学大学の講師をしている友人がいた。彼もまたバーナードとおなじく、定められた職務を全うするのではなく、自分の詩の才能などを活かした自由な生き方をしたいと望んでいた。しかし二人の考えは世間からすれば非常に逸脱したものであり理解されることはなかった。
●レーニナとバーナード、居留地へ
時間は経ち、レーニナとバーナードは交際することとなる。その後ふたりは文明化されていないニューメキシコの居留地へと向かうこととなる。
所長にニューメキシコ行きの許可を得に向かいバーナードだったが、所長もまた、かつて若かりし頃に居留地を訪れたことがあるということを耳にするのであった。
●目の当たりにする老いと青年ジョン
居留地に到着したふたりは、歳をとって醜い姿になった人々や、いまだに胎生によって子供を生み出しているなどといった現状を見て、ショックを受ける。
そんななかでふたりは白人の青年ジョンと出会う。彼のいきさつを聞いているうちにバーナードはジョンが所長の息子であることに気が付く。
そしてタイミングを同じくしてワトスンを介して所長が自分をアイスランドへと左遷させようとしているということを聞いていたバーナードは、所長への対抗手段(スキャンダル)としてジョンを連れていくことにした。ジョンは美しいレーニナに惹かれており、快く誘いに応じた。
●所長の辞職と新たな恋
帰還したバーナードを早速追放しようとしていた所長だったが、バーナードによりジョンとその母親(リンダ)の存在を面前でさらされたことによって辞職した。
所長とのいざこざが終わり、文明世界へもどったジョンとリンダ。
しかしリンダは、醜い見た目から人々に受け入れられず、それによりソーマの過剰摂取に走る。
いっぽうのジョンは高尚な倫理観がなく、人々が大量生産されているといった事実を目の当たりにして、かなりショックを受ける。
そんなカルチャーショックを受けるなかでも、レーニナとジョンは次第に惹かれていく。しかしレーニナがセックスに誘うと、ジョンは自分の倫理観では婚姻を結ぶまで関係をもたないと言って、レーニナを拒絶するのだった。
●リンダの死
ソーマの過剰摂取を続けていたリンダがついに亡くなってしまう。母親の命をうばったソーマに憎しみを抱いたジョンは、ソーマの配給を止めるために暴動を起こして群衆と争う。そしてそれを止めようとしたバーナードとワトスンも警察に捕まってしまうのだった。
●兄妹の最期
総統ムスタファ・モンドのもとへ連れてこられた三人(ジョン、バーナード、ワトスン)。ムスタファは三人に世界の真実を語り、安定を保つには人間らしい危険な感情は禁止しなければならないなどといった理想を三人に言って聞かせるが、ジョンらはそれに応じることはなく、バーナードとワトスンは世界には不適応として島流しされることとなり、ジョンは文明社会に置いておくことでどんな反応をみせるのか見てみたいというムスタファの好奇心によって、文明社会に残されることとなった。
●ジョンの最期
最終的に世界の仕組みに絶望してしまったジョンは、自ら首吊りによって自死の道を選択するのだった。
文章抜粋
●わずか三四階のずんぐりした灰色のビル。正面玄関の上には、〈中央ロンドン孵化・条件づけセンター〉の文字と、盾形紋章に記した世界国家のモットー、”共同性(コミュニティ)、同一性(アイデンティティ)、安定性(スタビリティ)”。(冒頭の一文)
●所長「しかし歴史的事実というのはたいてい不快なものなのだよ」
●ヘリコプターは勢いよく垂直に上昇した。ヘンリーは加速した。回転翼の音がスズメバチの羽音からジガバチの羽音へ、ジガバチの羽音から蚊の羽音へと変化した。速度計によれば、平らな屋上を持つ巨大ビルの群れは、数秒後には緑の公園や庭園に生えている幾何学的な形のキノコの群れとなった。その中のひときわ丈の高い細身の軸を持つキノコ、〈チャリングーT・タワー〉が、輝くコンクリートの円盤を天に差しあげていた。
●レーニナは首を振った。「”過去と未来は大きらい”」と教えを唱えた。「一グラムで現在(いま)だけつかむ」
結局、レーニナの説得でソーマを四錠呑んだ。五分後には根っこと果実が消え、現在という花が薔薇色に咲いた。
●ゆっくりと、ごくゆっくりと、緩慢に進路を転じる船の羅針盤の針のように、ふたつの足は右回りに回っていた。北、北東、東、南東、南、南南西。そこでとまって、数秒後、今度はゆっくりと左回りに回った。南南西、南、南東、東……。(最後の一文)
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作者について
オルダス・ハクスリーイギリスの作家。D・H・ロレンスなどとも親交があった。「すばらしい新世界」はSF、ディストピア小説の分野に大きな影響を与えた。
同じ作者の他作品
小説
- 『クローム・イエロー』 – Crome Yellow 1921年
- 「クローム・イエロー」森田草平訳 新潮社『世界文学全集 第2期6』1931年
- 『道化芝居』 – Antic Hay 1923年
- 村岡達二訳 春陽堂(世界名作文庫27)1934年 のちゆまに書房(昭和初期世界名作翻訳全集 第2期83)2006年
- 『くだらない本』 – Those Barren Leaves 1925年
- 『恋愛対位法』 – Point Counter Point 1928年
- 永松定訳 新潮社(新潮文庫)1953年
- 『すばらしい新世界』 – Brave New World 1932年
- 『みごとな新世界』 渡辺二三郎訳 改造社 1933年
- 『すばらしい新世界』 松村達雄訳 早川書房(世界SF全集10)1968年
- 『すばらしい新世界』 高畠文夫訳 角川書店(角川文庫)1971年
- 『すばらしい新世界』 黒原敏行訳 光文社(光文社古典新訳文庫)2013年
- 『すばらしい新世界』 大森望訳 早川書房(ハヤカワepi文庫)2017年
- 『ガザに盲いて』 – Eyeless in Gaza 1936年
- 本多顕彰訳 新潮社(現代世界文学全集19)1955年
- 『多くの夏を経て』 – After Many a Summer Dies the Swan 1939年
- 『時は停まるにちがいない』 – Time Must Have a Stop 1944年
- 『猿とエッセンス』 – Ape and Essence 1948年
- 『猿と本質』 前田則三訳 早川書房 1951年
- 『猿とエッセンス』 中西秀男訳 サンリオ(サンリオSF文庫)1979年
- 『ルーダンの悪魔』 – The Devils of Loudun 1952年
- 中山容、丸山美知代訳 人文書院 1989年
- 『天才と女神』 – The Genius and the Goddess 1955年
- 中山容訳 野草社 1983年
- 『島』 – Island 1962年
- 片桐ユズル訳 人文書院 1980年
短編集
- 『リンボー』 – Limbo 1920年
- Mortal Coils 1922年
- 『ジョコンダの微笑』 – Gioconda Smile 1922年
- 峯岸久訳 『黄金の十二』エラリイ・クイーン編 早川書房(ハヤカワ・ミステリ219)1949年 所収
- 上田保訳 『ジョコンダの微笑・尼僧と昼食』英宝社(英米名作ライブラリー)1956年 所収
- 『リットルメキシカン』 – Little Mexican (Young Archimedes) 1924年
- 「小アルキメデス」松村達雄、土井治訳 『三笠版現代世界文学全集14』三笠書房 1954年
- 「リットルメキシカン」朱牟田夏雄訳 「神童」『世界の文学53 イギリス名作集 アメリカ名作集』 中央公論社 1966年 所収
- 『二・三のグレス』 – Two or Three Graces 1926年
- 井伊順彦訳 「二、三のグレース」『二、三のグレース – オルダス・ハクスリー中・短篇集』 風濤社 2012年 所収
- Brief Candles 1930年
- Jacob’s Hands; A Fable 1930年代後半
- Collected Short Stories 1944年
詩
- 『燃える車輪』 – The Burning Wheel 1916年
- Jonah 1917年
- 『青年の敗北』 – The Defeat of Youth 1918年
- Leda 1920年
- Arabia Infelix 1929年
- The Cicadias and Other Poems 1931年
旅行記
- 『路上にて』 – Along The Road 1925年
- 『ピラトはふざけて』 – Jesting Pilate 1926年
- 『メキシコ湾のかなた』 – Beyond the Mexique Bay 1934年
エッセイ集
- 『オリーブの木』 – The Olive Tree and other essays 1936年
- 『平和主義者の道』 – What are You Going To Do About It? 1936年
- 北川悌二訳 南雲堂(英和対訳学生文庫)1962年 のち1972年再版
- 『目的と手段』 – Ends and Means 1937年
- 『眼科への挑戦:視力は回復する』 – The Art of Seeing 1942年
- 『永遠の哲学 – 究極のリアリティ』 – The Perennial Philosophy 1945年
- 中村保男訳 平河出版社 1988年
- 『科学・自由・平和』 – Science, Liberty and Peace 1947年
- 『知覚の扉』 – The Doors of Perception 1954年
- 河村錠一郎訳 朝日出版社(エピステーメー叢書)1978年 のち平凡社(平凡社ライブラリー)1995年
- 『天国と地獄』 – Heaven and Hell 1956年
- 『アドニスとアルファベット』 – Adonis and the Alphabet(イギリス版) – Tomorrow and Tomorrow and Tomorrow(アメリカ版) 1956年
- 『すばらしい新世界再訪記』 – Brave New World Revisited 1958年
- 『文明の危機 すばらしい新世界再訪記』 谷崎隆昭訳 雄渾社 1966年
- 『素晴らしい新世界ふたたび』 高橋衞右訳 近代文芸社 2009年
- 『文学と科学』 – Literature and Science 1963年
その他
- 『灰色の宰相』 – Grey Eminence 1941年
- The Devils of Loudun 1952年
児童向け
- 『からすのカーさん へびたいじ』 – The Crows of Pearblossom 1967年
- 神宮輝夫訳 バーバラ・クーニー(イラスト) 冨山房 1988年
同じ年代の有名作品
- 「クリスマス・キャロル」チャールズ・ディケンズ(イギリス1843)
- 「パリの秘密」ウージェーヌ・シュー(フランス1843)
- 「マリア・マグダレーナ」フリードリヒ・ヘッベル(ドイツ1844)
同じ国の有名作家
- ハーマン・メルヴィル(アメリカ)
- クリストファー・A・シムズ(アメリカ)
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2.社会データ
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