「テス」あらすじと解説・登場人物や舞台 トマス・ハーディ



ヒトコトあらすじ


 貧しい家に生まれた少女が、惚れられた男に襲われたのをきっかけに悲劇的に転落。最終的に殺人を犯してしまうーーという物語となっています。


スポンサーリンク

●1.基本データ
 Lキャラクター構成
    L舞台設定
 L詳しいプロット(展開)
 L文章抜粋
 

●2.補足データ
   Lココがスゴい!
 L似ている名作
 L似ている最近の作品 
 Lメディア化


●3.作者について
  L同じ年代の有名作品
        L同じ国の有名作家



1.基本データ




初刊:1891年 :トマス・ハーディ
長さ:長編 ジャンル:恋愛・悲劇・一代記


キャラクター構成



テス・・・・本作の主人公。ジョンの娘。エンジェル・クレア、アレックなどの妻になる。

アレック・ダーバヴィル・・・・テスに惚れた男。

エンジェル・クレア・・・・テスの最初の夫。終盤でテスと共に逃避行する。

ジョン・ダービフィールド・・・・テスの父親。ちっとも働かない男。



舞台



イングランド・・・イギリスを構成する一地域。



詳しいプロット(展開)


●働き者の少女・テス

 
 テスは、働かない父ジョン・ダービフィールドの代わりに、仕事を強いられている不憫な少女であった。  
 テスはその日も、馬車を引いて仕事に向かおうとするが、馬を誤って衝突死させてしまう。  

●援助を求めて


 稼ぐための足を失ったテスは、母のアドバイスにしたがって、親戚のダーバヴィル家に援助を求めに行く。
 しかしダーバヴィル家とはすでに血縁の関係は無かった。なぜならダーバヴィル家には名だけを買い取った、別の人々が住んでいたからである。  
 だがそれを知らぬテスの母親は、あわよくばテスがダーバヴィル家の子息などと結婚することを期待していた。  

●誘惑者アレック


 テスはダーバヴィル家を訪ねると、屋敷の女主人はおらず、代わりにその息子アレックがいるだけだった。  
 アレックはテスの姿を見て、すぐに恋に落ちる。そして彼は、なんとかテスを自分の家で働くよう説得する。テスは渋々仕事を請け負うことになるが、アレックのしつこいアプローチを拒否し続けていた。
 だがある時、テスがひとりなったタイミングでアレックは彼女を襲う。テスはあっという間に肉体を奪われてしまう。

●子の喪失


 彼女は家に帰宅して、心痛を母へ告げるが、母は慰めると言うよりも娘がダーバヴィル家と結婚する気がないという事にがっかりする。  
 テスはしばらく引きこもっていたがまもなく立ち直ると、再び家のために働き始めるようになった。  
 さらにテスはアレックとの間に子供を身籠っていたことを知るが、流産してしまう。テスは死んだ子に「ソロウ」と名づけると、無縁仏の墓にひっそりと埋葬してやった。

●運命の男、エンジェル・クレア


 数年の月日が流れ、テスは乳搾りとして酪農場で働くようになった。そこには牧師の息子であるエンジェル・クレアという男がおり、清純そうなテスは、すぐにエンジェルに言い寄られるようになる。
 しかしアレックとの過去のことなどを思い返すと、どうしても彼とそのような関係になる事は罪深いことだと思った。そのため働いている他の女の子たちとエンジェル・クレアをくっ付けようなどと色々画策するが、エンジェル・クレアのアプローチは尽きなかった。  

●阻まれるカミングアウト


テスは結局、エンジェル・クレアの強い求婚に押されるように結婚を受け入れる。
 彼女としては、彼に過去の穢れを結婚前に打ち明けておきたいと考えていたため、何とか彼に過去を打ち明けようとする。
 しかし手紙がうまく渡らなかったり、話そうとしても彼がたまたま忙しく話せなかったりと、運命のいたずらかのように、彼女の告白はことごとく阻まれた。  

●関係の破綻


 テスは結婚式の夜、ついにエンジェル・クレアに、自分の恥ずべき過去を告白する。  
 テスはきっと彼は受け入れてくれるはずだと希望を持っていたが、彼は予想に反して強い拒絶を見せた。エンジェル・クレアは心ない言葉をテスに浴びせて彼女を追い出す。そしてテスは実家に戻ることになった。

●冷酷な両親


 テスは事の経緯を母親に話してみるが、母親が慰めることはなく、冷たく突き放されるだけだった。
 というのも母親は結婚前に、自分の過去の事は話さないほうが良いとテスに念押ししていたにも関わらず、テスがその約束を守らなかったという事情があったからである。
 さらにテスの両親は、テスがエンジェル・クレアから貰っていた宝石などの資産を勝手に使ったりもする。それによってテスの実家は貧乏に陥る。  

●アレックとの再会


 生活苦のなか、テスは因縁の相手、アレックと再会する。  アレックは以前とは変わっており、テスへ行ってしまった過去の過ちを恥じ、説教師として活動していた。
 だがテスと再び会うと、アレックの心に再び情念の火が灯り始めた。 再びアレックからのアプローチを受け始めたテスは怖くなり、エンジェル・クレアへと「まだ愛している」といった旨の手紙を送った。  

●すれ違うふたりの心


手紙を受け取ったエンジェル・クレアもまた、テスと別れてしまった事を後悔していた。  
 エンジェル・クレアはまもなく、テスのもとへと向かうが、彼はショックを受ける。  
 テスは生活困窮から、アレックと結婚していたのだった。エンジェル・クレアはまだ愛していることを彼女に伝えて身を引いた。  

●かけがえのないひと時


 テスは、「夫はもう帰ってこない」、そう言い続けるアレックを憎み、まもなく彼を刺殺する。 そしてエンジェル・クレアのもとへ向かう。  
 エンジェル・クレアはテスが夫を殺した事、これまでの全てのことを許す。そして殺人犯となった彼女と逃げることを決意する。
 そしていつかは捕まるとは分かっていたが、ふたりはかけがえの無い数日間を過ごす。    

●満ち足りていたテス


 だがまもなく警察がふたりのもとへやってくる。エンジェル・クレアは眠っているテスが起きるまで待ってほしいと警察に願い出て、警察はそれを了承した。  
 まもなく目覚めるが、彼女に困惑する様子は無く、彼女は満ちたりた気分で自ら警察に進み出ていった。





スポンサーリンク

文章抜粋


●五月下旬のある夕方、中年配の男がシャストンから、隣接するブレイクモア――ブラックムーアと呼ばれる――の谷にあるマーロット村へと、家路を辿っていた。男の両脚はグラグラして、歩き方には癖があり、とにかく直線から左へそれるのだった。




2.雑多データ


ココがスゴい!


●計算され尽くされた、悲劇のスレ違い

とにかく物事の起こるタイミングが秀逸な作品だと感じました。  
 あらゆる出来事が最悪なタイミングで起こってしまうばかりに、主人公テスはどんどんと悲劇に向かって突き進んでいきます。

 もしもタイミングさえ間違っていなければ、こんな「悲劇」にはならなかっただろうーーむしろ幸福が訪れていたかもしれない、という強烈なやるせなさが胸を突きます。

似ている名作





似ている最近の作品


Fate/stay night [Heaven’s Feel]
 
 Fate/staynightのバッドルートの映画化作品。全三部作。
懸命な献身は報われない。穢れた自分を恥じ、そして最後には人殺しにまで手を染めるーーそしてそれを容認する男ヒロイン。「悲劇の少女」を辿っていく流れは、かなり似ているかなと思います。


メディア化


テス(1979年映画)

 1979年に、フランス・イギリス映画として映画化されています。


テス(2008年ドラマシリーズ)

 2008年にも、BBC文芸ドラマなどといった企画でドラマシリーズにもされているようです。アマプラなどでも観れました(2022/03時点)。


スポンサーリンク



3.作者データ

トマス・ハーディ

 イングランド(イギリス)の作家・詩人。代表作に「カスターブリッジの市長」「日陰者ジュード」などがある。

    長編小説

    • The Poor Man and the Lady. 1867年
    • 『窮余の策』Desperate Remedies. 1871年
    • 『緑樹の陰』Under the Greenwood Tree. 1872年
    • 『青い眼』A Pair of Blue Eyes. 1873年 (『Tinsley’s Magazine』誌 1872年9月-1873年7月連載)
    • 『遥か群衆を離れて』Far from the Madding Crowd. 1874年
    • 『エセルバータの手』The Hand of Ethelberta. 1876年
    • 『帰郷』The Return of the Native. 1878年
    • 『ラッパ隊長』The Trumpet-Major. 1880年
    • A Laodicean. 1881年
    • 『塔上の二人』Two on a Tower. 1882年
    • 『カスターブリッジの市長』The Mayor of Casterbridge. 1886年
    • 『森に住む人たち』The Woodlanders. 1887年
    • 『テス』Tess of the d’Urbervilles. 1891年
    • 『日陰者ジュード』Jude the Obscure. 1895年
    • 『恋魂』The Well-Beloved. 1897年(1892年から連載)
    • (Florence Hennikerと共著)The Spectre of the Real. 1894年

    短篇集

    • 『ウェセックス物語集』Wessex Tales. 1888年
    • 『貴婦人たちの物語』A Group of Noble Dames. 1891年
    • 『人生の小さな皮肉』Life’s Little Ironies. 1894年 
    • 『変わりはてた男とほかの物語』A Changed Man and Other Tales. 1913年

     

    同じ年代の有名作品
    • 「処女地」イワン・ツルゲーネフ(ロシア1877)
    • 「人形の家」ヘンリック・イプセン(ノルウェー1879)
    • 「デイジー・ミラー」ヘンリー・ジェイムズ(イギリス1879)
    同じ国の有名作家
    • ヘンリー・ジェイムズ(イギリス)
    • ロバート・ルイス・スティーヴンソン(イギリス)
    • ジョージ・エリオット(イギリス)


    スポンサーリンク
    Author: meisaku

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。